核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

1961年の大江健三郎語録

   ※
「大江 二十六億円もかけた国産第一号原子炉が、自衛隊の戦闘機十機も墜落したと思えば、動かなくてもいい。つぎの炉をつくるために立派に役立つからだと現場の人がいってらして、ぼくはおもしろかった。ゼイタクでいいですよ。あんなに大きな原子炉だから、動かなければアパートにしてしまえばいい(笑)。それは冗談だけど、近藤さんはさっき、原子炉建設に疑問をもったと……。」
 (略)
「大江 アメリカの科学小説で、放射能のために突然優秀な子供ができて、十二才ぐらいでシェークスピアなみの戯曲を書いたりする話を読みましたが、あなたがたの子供さんなら、十才ぐらいで小型原子炉を作ってあそぶのかもしれない(三人大笑い)
 近藤夫人 そうなればいいんですが、いまのところ実験データではぜんぶ劣性遺伝だそうですから、危険ですね。
 近藤 だいたい良い効果はないようです。それに自分たちの子供は放射能をうける仕事をさせないほうがいいと思いますよ。この仕事は一代限りですね」
 (略)
「大江 科学はあまりできなくても政治力のある研究者が二、三人いれば、そういう人たちが政治家とたたかって原研をよくするかもしれない。理学部出身の全学連幹部を、原研に入れるといい(三人大笑い)。」
 (略)
「大江 原子炉のほうは長い未来のお仕事です。いまはまず、お子さまを優先なさっても決して遅すぎはしませんよ。」
 (大江健三郎「同世代ルポ35 若き原子科学者夫妻」
  東海村原子力研究所 近藤達男 靖子さん
  『毎日グラフ』1961(昭和36)年9月3日号)
   ※