核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2020-01-01から1年間の記事一覧

サアサアサアサア

福地桜痴の『滑稽妄説 仙居の夢』(一八九〇)という政治小説の、西藤という壮士が悪徳政治家を問いつめる場面で、 「サアそれは」 「サア」 双方「サアサアサアサア」 と、歌舞伎っぽい掛け合いがでてきます。 人気現代ものドラマでこの「サアサアサアサア…

福地桜痴が考えた私擬憲法

一八八一(明治一四)年。日本各地の有志と同様、福地桜痴も私擬憲法(ぼくのかんがえたけんぽう)を発表しました。 (以下、山田俊治『福地桜痴』一四〇~一四一頁より要約) 欽定憲法でも民定憲法でもなく、国会で審議制定される国約憲法。 法の前の平等、…

通常兵器の廃絶をためらう福地桜痴

一八八四(明治一七)年。福地は『東京日日新聞』の社説「欧州ノ侵略主義」で、「文明ハ強兵ヲ云フ」のではなく、「最多量ノ幸福ヲ享有セシムルニ在リ」と、侵略主義を批判していました。しかしその翌日の社説「欧州ノ武備」では、「平和ヲ唱ヘ兵備ヲ廃スルノ…

「暴を以て暴に代へ何ぞ論ずるに足らん」

福地桜痴が桜田門外の変(井伊直弼暗殺)を詠んだ「刺客歌」という漢詩の一節です(山田俊治『福地桜痴』三四~三五頁より)。井伊直弼の独裁政治を批判しつつも、その暴力に暗殺という暴力で対応する刺客たちの行動を、桜痴は認めませんでした。 ……これだけ…

福地桜痴「女壮士」(『文華』一九〇三年一一月号)

あの『女浪人』に近い時期で、日露戦争直前でもあるこの作品。 国会図書館の閲覧室まで見に行ったのですが期待はずれでした。コピーはとらなかったので、山田俊治『福地桜痴』三五四頁より。 「権門に媚びて立身した旗本の文弱な子息との婚姻を父から強制さ…

芹沢かも

山田俊治『福地桜痴』の三三六頁、小説『女浪人』のあらすじを記した箇所に、「芹川鴨」と書いて「せりざわかも」とルビをふった箇所がありました。「芹沢鴨」または「せりがわかも」の誤植かも、と思われる方のために一言。 近代デジタルコレクションで読め…

福地桜痴「悪因縁」(『文芸倶楽部』一八九六二月 予定)

すげー読みたくなるのですが単行本化はされてない未完の作。 山田俊治著(二八二頁)よりあらすじをさらに要約します。 文久三年(一八六三)。ヒロイン阿高の夫賢之丞は、紀伊派と一橋派の政争に敗れて失踪し、阿高は長坂という男の後妻となります。 嵐の夜…

福地桜痴『思ひ思ひ』雑感

なぜこの作品が、私を久しぶりにしあわせな気分にさせたのか。思いつくままに書いていきます。 才子佳人が恋愛の末に結婚する小説というのは明治前期によくあるのですが、この小説は才子と不美人才女が結婚したところから始まり、それこそ「思ひ思ひ」に文学…

福地桜痴『思ひ思ひ』(一九〇一)

欧米帰りで女権拡張論者の乗子(のりこ)と、華族出で文学改良論者の光氏(みつうじ)。この赤居新婚夫婦が上流社会に風雲を巻き起こすという、風変りな物語。ヒロインの挿し絵からしてありがちな明治の美人風ではなく、力持ちで大柄に描かれています。 村井…

山田俊治『福地桜痴 無駄トスル所ノ者ハ実ハ開明ノ麗華ナリ』(ミネルヴァ書房 二〇二〇年一〇月) その2

残念なお知らせもありました。 福地の『社会百題』(一八九一)を、私は内田魯庵の『社会百面相』のような短編社会小説群だと思っていたのですが、実際は「当時の世相を斬るコラム」(二二六頁)だそうです。 さらに残念なことに、単行本『出放題』には一部…

山田俊治『福地桜痴 無駄トスル所ノ者ハ実ハ開明ノ麗華ナリ』(ミネルヴァ書房 二〇二〇年一〇月) その1

ついに届きました。私の博士論文には言及されていないのですが、些細なことです。『仙居の夢』『女浪人』をはじめ、桜痴の膨大な社説や小説が言及されています。 未読の桜痴小説で目についたのは、『練絹新三郎』(一八九二 『武蔵鐙』一八九一を改題)。「…

評論家が権力者になる一例

今回は福地桜痴とは関係のない話です。ウィキペディアの「評論家」の項で興味深い事例を見かけたので。 ※ また、その世界の人気者として知られる特定の人物や団体を激しく攻撃・非難することで評論の世界で名を売ったり、業界内部で実権を持つ特定の人物や団…

福地桜痴『滑稽小説 花懺悔』(一八九〇) 感想

ミネルヴァのフクロウさんが夜中になっても飛び立たないので、先に福地桜痴の小説を読んでみました。が、私が期待した意味での花札小説ではありませんでした。 私はこの小説で展開されている「八八」というルールを知らないので、そのせいもあるかも知れませ…

福地桜痴『社会百態』(一八九一 予定)

また読む予定の本が増えました。 内田魯庵の『社会百面相』に似た題ですが、桜痴のほうが十一年も前です。 単に各種職業や地位の人々の生態を並べただけの小説なら、珍しくもないのですが……。

福地桜痴「滑稽小説 花懺悔」 (予定)

福地本の到着を待つ間、「福地桜痴 小説」で検索していたら、面白そうなのを見つけました。 以下、日本かるた文化館のサイトより https://japanplayingcardmuseum.com/111-3-2-masterpiece-hanacartanovel-middlemeiji/ ※ (二)花札小説の代表作、『滑稽小…

外務省のサイトより

核兵器禁止条約の英訳と、暫定的な日本語訳が読めます。日本語訳は条約の正文ではないそうで、本格的に読みたい方は英文をどうぞ。 https://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/ac_d/page23_002807.html 「加盟国が通常兵器による戦争を始めたらどうするのか」がふと…

核兵器禁止条約、発効へ

以下、YAHOOニュースより。 ※ 核兵器禁止条約発効へ ホンジュラス批准し50カ国・地域に 「核なき世界」へ一歩 毎日新聞1297 史上初めて核兵器を全面禁止する核兵器禁止条約を批准した国・地域が24日、発効に必要な50に達した。中米ホンジュラスが新たに…

福地桜痴本、予約しました。

久し振りに大きな買い物ですが、それだけの価値はあると思います。

コルタサル『石蹴り遊び』も未読でした

アルゼンチンでボルヘスに認められたという作家、コルタサル。 その『石蹴り遊び』は、かなり実験的な作品のようです。 私が思いつく程度の実験的手法は、とっくに試されずみかもしれません。 優先順位は幸田露伴の『風流微塵蔵』より下ですが、探してみます…

主人公のいない小説

W・イーザー『行為としての読書―美的作用の理論―』より。 ※ 一八世紀小説では支配的であった主人公を頂点とするヒエラルヒーは、一九世紀になると次第に均等化の方向をたどり、「主人公のいない小説 A Novel without a Hero」といった名称が出てくるように…

マルクスはエコロジストか?

近年、斎藤幸平という方をはじめとして、晩年のマルクスはエコロジストだったという趣旨の博士論文や著作が出ているようです(『マルクスとエコロジー』『大洪水の前に マルクスと惑星の新陳代謝』など)。 本当だとすれば、私のマルクス否定論も修正を余儀…

個人ではなく、ネットワークを描く小説を求めて

そもそも、『日本文壇史』自体がそれに近い構造なのですが。 一個人の生きざまを直線的に追っていくのではなく、個人たちの横のつながりの平面、それに時間の経過を加えた立体的な小説を読んでみたいという願望は、伊藤整のみならず私も共有しています。「梁…

幸田露伴『風流微塵蔵』(明治二六~二八 予定)

伊藤整『日本文壇史 4 硯友社と一葉の時代』を読んでいたら、気になる小説が見つかりました。 ※ 無数の人物が作中に次々と登場し、(略)更にその外側の人物の生活が描かれ、その人物のまた外側の別人物が描かれて、横に横にと話の中心が移っていく構造であ…

伊藤整の『佳人之奇遇』観

『日本文壇史 2 新文学の開拓者たち』(講談社文芸文庫 一九九五)より。 伊藤整は、近代日本文学の、「良心の訴えと自己のエゴとの対立を社会秩序の中でいかに処理して生きるかという型」(二〇一頁)が、森鷗外「舞姫」の時期に出そろったとしています。…

驚くほどうまくいった一日。

といっても将棋とTRPGですけど。たまには、こういう一日もいいものです。

福沢諭吉『世界国尽』中のリベリア共和国

『佳人之奇遇』以前(一八六九)の、リベリア共和国についての記述。 福沢諭吉『世界国尽』巻二、「阿非利加」に、「「理部利屋」は、アフリカ州の国柄に、一種無類の共和制、人民およそ五十万、議事院立てて事を議し、北アメリカに流行の、自由の風を移せし…

島田雅彦『佳人の奇遇』(講談社文庫 二〇一一) 予定

一文字違いの『佳人の奇遇』という現代小説があると知りました。 特に文体模写やパロディというわけではなさそうですが、比較対象として一応探してはみます。コロナが落ち着いたら……。

『佳人之奇遇』中の、ポーランドと木戸孝允

ポーランドが滅んだ原因は「自由の誤解」にあると東海散士は見ます。 ※ 抑々彼民や自由の理を誤り、一身の自由を以て無上の自由と為し、国家独立の自由、更に貴きを悟らず。 春陽堂『明治大正文学全集 第一巻』 三六頁 ※ そして日本の使節団がポーランドを通…

中川翔子『綺麗ア・ラ・モード』(二〇〇八)

久し振りに音楽の紹介を。新曲ではありませんが。 さきほど流れてきたのを聞いて「これは」と思い、調べてみたら先日亡くなられた筒美京平氏の作曲でした。つくづく偉大なお方でした。 ウィキペディアの記事では「80年代っぽい曲」とありますが、そのへん…

『佳人之奇遇』あらすじを三行でまとめると

会津藩白虎隊の生きのこり東海散士は、世界各地をめぐり、マイノリティ活動家(女性含む)たちとの出会いと語り合いを通して、小国日本が独立を保つ道を模索するのだった。 ……文としては一行。本当に面白いのは細部なのですが、こんなもんでしょう。 後半は…