核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

北原白秋『思ひ出 抒情小曲集』も読んでみた

九州柳河の、旧家のTonka John(大きい方の坊っちゃん、という意味らしいです)として生まれ育った北原の、幼少年時代の心象をつづった詩集。 さすがに表現が凝ってるというか、自爆だ体あたりだや、「一二三四五六七」は出てこないな、と思ったらありました…

北原白秋『邪宗門』読んでみた。

戦争詩だけで詩人を評価するのもどうかと思い、北原白秋の代表作『邪宗門』を読んでみました。 こういう退廃的な心象風景の乱舞に酔うには、こちらの感受性が衰えてしまったようです。一語一句たりとも見逃さないようていねいに読んだはずなのですが、期待し…

初陣のハワイ奇襲で体あたりな北原白秋

前々々回にこれで最後と書いてしまいましたが、まだ体あたり詩が残っていました。 「Z旗」(『大東亜戦争 少国民詩集』)。 ※ 待ちに待つたる初陣(うひぢん)の ハワイ奇襲だ、爆撃だ。 風に衝き行く何万里、 うなれプロペラ、どこまでも。 母のをしへに身…

なにげに映画化されてた北原白秋

『この道』という題で、二〇一九年に北原白秋と山田耕作の映画があったようです。

「一二三四五六七」と詠う北原白秋

自爆とも体あたりとも書いていませんが、そうとしか読めない内容です。題名は「航空母艦」。 ※ 見ろさしちがへ戦法だ。 撃沈、撃沈、また撃沈、 空母は見る見る沈んでく。 一二三四五六七。 (『白秋全集28 童謡集4』四一三頁) ※ 前の連に「ミッドウェー…

ほんと、体あたりが好きな北原白秋

北原の自爆・体あたり詩の紹介も、『大東亜戦争 少国民詩集』に関してはこれで最後です。題は「まかせろ」。 ※ 僕の兄さん、海軍だ。 いいな、少年飛行兵。 ゆくぞ、雷撃、体あたり。 俺にまかせろ、さう笑ふ。 (『白秋全集28 童謡集4』三七四頁) ※ 雷撃…

東条英機首相に諂う北原白秋

この「東条さん」(『大東亜戦争 少国民詩集』)という詩もわりと知られているので、第四連を引用するにとどめておきます。 ※ 帝国議事堂、曲(まが)り角(かど) 少年少女に手をあげる。 「お早う、禊(みそぎ)か、よし、行つた。」 お馬で声かけ、とつと…

十二月八日への誓いを強要する北原白秋

「誓へこのときこの八日」(『大東亜戦争 少国民詩集』)。「誓ふ」ではなく「誓へ」、つまり命令形です。 ※ けふだ、大詔奉戴日、 ああ、あの時だ、あの八日。 宣戦布告、あの電波、 朝のラジオのあのマーチ。 直立不動、しんとして、 涙ながれた、僕たちは…

デービット・J・ルー著 長谷川進一訳『松岡洋右とその時代』(TBSブリタニカ 一九八一) その2

松岡洋右と北原白秋の接点が見つかりました。 ※ (一九三三(昭和八)年)、政党解消連盟の会合では、有名な詩人北原白秋が作詞した同連盟の歌をうたった。 (一七二頁) ※ 政党解消連盟の歌、調べてきます。

少年飛行士にも自爆を命じる北原白秋

北原白秋は多くの童謡を書いてもいますが、少年のいのちを大切にする人ではありませんでした。 ※ 空の魂(たましひ)、あの人たち、 少年飛行士健気(けなげ)だな。 雷撃、爆撃、必中弾(ひつちゆうだん)、 ぐわんと捨身の体あたり。 (『白秋全集28 童…

偵察機を自爆させて喜ぶ北原白秋

偵察機なんてのは、生還して敵情を報告するまでが任務だと思うし、第一普通は爆弾や魚雷を積んでいないので、体当たりしてもダメージは与えられないとも思いますが。 国民的詩人の考えることは違いました。珊瑚海海戦での偵察機を詠った詩「還らぬ偵察機」の…

自爆美に酔いしれる北原白秋

たとえば、「九軍神」という詩があります。 ※ ああ、あの特別攻撃隊。 つひにかへらぬあの五隻。 (『北原白秋全集28 童謡集4』三三八頁) ※ この時期にはまだ「神風特攻隊」とは呼称していませんが、自爆を前提とした小型潜水艇の出撃です。なんで五隻な…

北原白秋「言葉」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

小林秀雄の場合と異なり、北原白秋が戦争詩を書いていたという事実はすでに知れ渡っており、ネットでもよくネタにされています。そういう詩人(?)の詩句をつかまえて「戦争を賛美している!けしからん」とやっても学術上の新発見にはならないと思うので、…

北原白秋「ガンジー」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

『大東亜戦争 少国民詩集』なんて題の本は、読まなくても「戦争ばんざい 日本ばんざい」式のクリシェ(決まり文句)ばかりに決まっているし、すでに他の方が紹介してることもあるわけです(前回の「大東亜地図」にしても、早川タダノリ氏の著作に紹介されて…

北原白秋「大東亜地図」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

一味違う戦争便乗詩。そういう印象を受け、図書館で『北原白秋全集 28 童謡集 4』を借りてきました。 絵文字にルビつき。つまり(文字化けご容赦)、 [●](ひのまる)だ Ω(はうだん)だ ✈(ひかうき)だ といった具合なのです(原文はたて書きなので、…

デービット・J・ルー著 長谷川進一訳『松岡洋右とその時代』(TBSブリタニカ 一九八一)

後の外務大臣、松岡洋右(まつおかようすけ)が外務省に入ったのは一九〇四(明治三七)年、つまり日露戦争開戦の年でした。上掲書はその事情について、 ※ それから、外務省に入ると徴兵猶予の特典があった。日本がロシア帝国に宣戦を布告したのは一九〇四年…

福地桜痴『女浪人』論、八割方完成

とはいえ、かんじんの題名が決まらず、注も完成していないわけですが。 それらを決定するには、もう一度国会図書館に行く必要がありそうです。

齋藤伸郎「矢野文雄と明治十四年の政変」(『近代日本研究』 二〇一九)

「矢野龍渓」と名のつく論文は一通り読んだはずですが、本名の矢野文雄、つまり政治家としての矢野についてのこの論文は、うかつにも読み落としていました。福地桜痴と福地源一郎にも言えることですが、ほとんど別人かと思えるほど、活動範囲の広い人でして…

月も変わったことだし

小野梓への未練はいったん断ち切って、福地桜痴『女浪人』論の完成をめざそうと思います。 題名と枠組みをどうするかは、今日一日かけて考えるとして。なんとか今月(今年)中に形にしたいものです。

『愛々草紙』の由来

小野梓『愛々草紙』第一駒より。 ※ 野蛮の民に愛なしとハ最と理ある事の葉にて侍りける。国を愛し親を愛し子を愛し夫を愛し妻を愛する事柄ハ皆な是れ文明の事ぞかし。茲に綴り出す一篇の物語ハ名を愛々と称へて (『明治文学全集 12』三九五~三九六頁) ※…

小野梓は確かにユニークだけど

『愛々草紙』で論文は書けない、という結論に達しました。 光るところはあるんですよ。道中で盗賊甲と乙に襲われ、仕込み杖で返り討ちにした後、 「彼輩も自業自得とハ申しながら誠に不愍で御坐りますなア」(三九九頁) と述懐するところなど、単なる勧善懲…

小野梓「たとえば、きみが東京から大阪へ行くとする」

小野梓「余ガ政事上ノ主義」(明治一五年)より。立憲改進党の方針についてのたとえ話。カタカナはひらがなに変えてお送りします。 ※ 宛も東京を発して大坂に赴くが如し。大坂に至るは是れ極所即ち吾人の目的なり。(略)一は飛揚函根を越へ富士山に跨り近江…

あらすじ!愛々草紙

第一駒 「ワハハ 守節仮面!もはや のがれることはできんぞ」 「ワーッ」 第二駒 守節仮面のむすこの木王仮面が登場する。 「ワハハ 木王仮面!もはや のがれることはできんぞ」 「グエーッ」 第三駒 (場面がかわって、木王仮面の母親の萩野仮面が出てる……)

『明治文学全集 12 大井憲太郎 植木枝盛 馬場辰猪 小野梓集』(筑摩書房 一九七三)

借りてきました小野梓。「救民論」の漢文版も載ってました。上海で書いたそうです。「宇内」(世界)の「一大合衆政府」建設を訴えています。 それ以上に気になるのは、小野梓が晩年(といっても三十三歳)に書いた未完の政治小説『愛々草紙』。「未来の未来…

川西政明『小説の終焉』(岩波新書 二〇〇四) その2

「『浮雲』から持ちこしてきた小説の主題は、一九七〇年代には書き終えられてしまったといえよう」(「はじめに」ⅲ頁)と断言する書。 論拠が示されているわけではなく、自分は「日本で小説を一番多く読んでいる一人だと思う」との、読書量への自負がすべて…

柄谷行人『憲法の無意識』その2 六十年周期は百二十年周期だった!?

間違いを素直に認めるのは、認めないよりはいいことですが、限度もあります。 ※ 第二に、(引用者注 『戦前の思考』を)読み返して感じたのは、私が九〇年代初期に考えていた状況認識には欠陥があるということです。たとえば、私はそのころ「歴史の反復」に…

柄谷行人『憲法の無意識』(岩波新書 二〇一六)

日本国憲法九条は日本人の無意識に根ざしているものだから変わることはない、という論調には賛同できませんでしたが、勉強になった箇所もありました。 ※ 明治の段階で、西洋の平和論はかなり普及していました。それは自由民権運動の進展とともに導入されたの…

小野梓もノーマークだった

柄谷行人の『憲法の無意識』を読んでいたら、明治の平和主義者として、小野梓(おのあずさ)というなじみのない名前が出てきました。 前に一度ぐらいは『明治文学全集』でお目にかかっているはずですが、うかつにも深入りせずにいました。矢野龍渓らと同じ立…

柄谷行人「文学という妖怪」(『文学界』二〇二〇(令和二)年三月号)

「近代文学の終り」(二〇〇四)は、「私の記憶する限り、これは、別に近代文学の終りを主張するために書いたものではなかった」(二三二頁)という柄谷の言に驚かされます。 「実は、私は自分の書いた論文のことをよく覚えていませんでした」(二三二頁) …

「万歳ヒットラーユーゲント」、聞いてみた。

北原白秋の歌詞だけで音楽の良し悪しを判断するのもどうかと思い、聞いてみました。サビの「万歳ヒットラー~」「万歳ナーチースー」が外にもれないよう、音量を絞って。 萬歳ヒットラー・ユーゲント - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp) 芸も…