核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

#倫理学

とはいえ。

マルクス主義者に対しても、平和を保つよう努力しなければならないとは思うのです。イスラム諸国に対してそうしなければならないのと同じように。

小林正弥『非戦の哲学』(ちくま新書 二〇〇三)より マルクス主義批判

マルクス主義の失敗以降、「大きな物語」を語ること自体を危険視するようになった、リオタールらのポスト・モダン思想に反論して。 ※ ……マルクス主義が失敗したのはその基本的理論の多くが誤っていたからなのであって、「大きな物語」一般が誤りだからではな…

小林正弥『非戦の哲学』(ちくま新書 二〇〇三)より「平和術」

「平和術」という造語は私も博士論文で使ったことがありましたが、そのずっと前に小林氏が論じていました。このたび『非戦の哲学』を読み返して気づいた次第です。 ※ (新平和運動では) かつてのような声明・抗議だけではなく、音楽・瞑想・踊り・演劇など…

王琪穎「江華島事件からみる福地源一郎の朝鮮論 : 『東京日日新聞』の社説を中心に 」

前回に引き続き、王琪穎氏のご論文を紹介します。「江華島事件からみる福地源一郎の朝鮮論 : 『東京日日新聞』の社説を中心に 」(アジア地域文化研究 (12), 1-26, 2015 )。 1875(明治8)年に起きた日朝間の紛争、江華島事件。 征韓論の再燃もあった…

王琪穎「福地源一郎の東邦論: 『東京日日新聞』の社説における露土戦争」

明治時代にも日本の戦争に反対する人々がいたことは、当ブログおよび論文で再三述べてきました。 では、日本以外の国同士の戦争、たとえばロシアとトルコの戦争に反対した例はあったのか。その数少ない例を取り上げたのが、王琪穎氏の論文「福地源一郎の東邦…

大正の平和主義文学(仮)

たまには前向きな話を。 博士論文『明治の平和主義小説』に続く第二弾として、『大正の平和主義文学』という論文集を完成させたい、という野望を私は抱いています。媒体は後で考えるとして。 平和主義に明治も大正もあるものか、と思われるかもしれません。…

ケインズ著  塩野谷祐一訳 『雇用・利子および貨幣の一般理論(ケインズ全集第7巻)』 東洋経済新報社 1983

近代経済学の古典に手を出してみましたが、目指す不換紙幣論は見つかりませんでした。代わりに平和論を。 ※ 私は先に付随的にではあるが、新しい体制は古い体制に比べて平和にとっていっそう望ましいものであろうと述べた。この点はもう一度繰り返し、強調す…

加藤尚武『戦争倫理学』(ちくま新書 2003)より 「武力行使なき武力抑止は可能か?」

示唆に富む同書の中でも、これはと思った箇所を書き写しておきます。 ※ 問題の核心にあるのは、武力行使を予防したり、発生した武力行使を停止させたりする手段として、武力行使を含まない平和的な方法が存在するかどうかである。 (略 経済制裁は戦争を防止…

ラセット『安全保障のジレンマ』より 第一次大戦

※ 第一次大戦の勃発に先立つ直前の時期を対象にとりあげた主要な研究によると、それぞれの国の意思決定者たちは敵対的な行動の脅威を感じとり、その知覚が敵対的な国々にたいして敵対的な行動をとることにつながったという事実が明らかにされている。いい方…

『国際政治事典』より 「安全保障のジレンマ」

※ (前略)このように、自国の「安全」を本来は確保するための軍事力が、結果的に自国の「脅威」認識を拡大するというジレンマを生むことになる。ピストルを持つ敵同士が双方ともに脅威を感じる理由は、相手ではなく、自分がピストルを持っていることに起因…

安全困境

「安全保障のジレンマ」の中国語訳をgoogle翻訳してみたら、「安全困境」と出ました。四字熟語として定着できないものでしょうか。どうも「安全保障のジレンマ」と毎回書くのはこなれない気がしまして。

黒島伝治「反戦文学論」中の『ある青年の夢』評

青空文庫様より引用。 ※ 武者小路実篤の「或る青年の夢」は、欧洲大戦当時に出た。これは、人道主義の戦争反対である。 この場合に於ても、死の恐怖、人間が、人間らしい生活が出来ない悲惨を強調している。ところがこゝでは個人よりも人類が主として問題に…

『ある青年の夢』第三幕執筆中の武者小路実篤

安全保障のジレンマ(?)に落ち込んだ武者小路実篤の苦悩。下級生との喧嘩がエスカレートして、ついに相手が刃物やピストルを持ちだした場面を書いている時の話です。 ※ 或る青年の夢は一場切りかけなかつた。しかもそれは第三幕の一場だ。第三幕は之でおは…

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア著 田中明彦/村田晃嗣訳 『国際紛争―理論と歴史〔原書第4版〕』より 国際的制度

安全保障のジレンマを軽減するにはどうしたらいいか。その1、国際的制度。 ※ なぜ国際的制度が重要なのか。なぜなら、それらは期待を形成する枠組みと情報を軽減するからである。国際的制度のおかげで紛争になることはないと、人々は信じるようになる。国際…

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア『国際紛争―理論と歴史〔原書第4版〕』における安全保障のジレンマの定義

少し前にも読んだ気がしますが、今回は安全保障のジレンマがらみを中心に読み直してみます。 ※ 安全保障のディレンマこそ、国際政治の本質―無政府的すなわち上位の政府が存在しないこと―にかかわる事態にほかならない。つまり、無政府状態の下では、自らの安…

ラセット『安全保障のジレンマ―核抑止・軍拡競争・軍備管理をめぐって』(予定)

まんま、『安全保障のジレンマ』という題の本があるそうです。これも要チェック。 (2016・5・17追記 チェックしました。昨日の記事に一部引用)

安全保障のジレンマ

A国の軍備を恐れるあまりにB国が軍備を増強し、それがまたA国にとっての脅威となって今度はA国が軍備を増強し…という、たぶん文明発祥とともにある悲惨な現象。 平和学の本にはたいてい出てきますが、当事者の立場でそれを解消するうまい方法は、今のと…

寺島俊穂 『戦争をなくすための平和学』(予定)

大手書店を二軒ほど回ったものの在庫はありませんでした。 いずれは入手しておきたい一冊です。

蘆花日記 日米戦争の不可避について

非難したいわけではなく、こういう感想を持つこともあったということで。 1918年12月6日。 ※ 一寸新聞を見たら、米国が大西洋艦隊を太平洋に移すといふ。癪に障る。 午餐の時、其話をして、日米戦争の避け難い話をする。怒気を発し、踏潰す、と憤る。…

『蘆花日記』 第一次大戦下の平和論

1918(大正7)年10月25日。ヨーロッパの平和はまだ訪れる前。 ※ ●余曰く、白耳義(ベルギー)などの何千の女は如何だ、独逸の女は独逸の男の所行について何と思ふだらう、「万国の労働者一致せよ」ではないが、女が世界を通じて一致しないで、国々…

CiNiiで読め……なくなりました。

過去の仕事のうち以下の2本が、CiNiiで読めるようになりました。 (2017・6・29追記 現在は本文は読めなくなっているようです) 自衛のための戦争は許されるか : 村井弦斎「匿名投書」が提起する問題(近代部門,第二七回研究発表大会・発表要旨) 菅原…

エルシュテイン『女性と戦争』(法政大学出版局 1994)

いくつもの例外はあるものの、近代日本の文化でも、「男性と戦争、女性と平和」の結びつきは強固なようです。 ※ 私たち西洋人は女性と平和、男性と戦争、という結びつきを当然のことと考える伝統を受け継いでいる。(略)これらの範例的結合は、それ以外の声…

斎藤美奈子『物は言いよう』(平凡社 2004)

「【心得 四九】 反戦平和は女性の専有物にあらず。(254ページ)」より。 ※ 「わたしたち女性の手で」というピンクカラーの反戦論は、そろそろ卒業してもいいのではないか。 一方的に「殺されるのはイヤだ」という被害者の論理から、「殺すのも殺される…

伊藤計劃『ハーモニー』(2008)

星一『三十年後』(1918)からさらに九十年後。あのテーマを極限まで追求した作品、という印象を受けました。 政府ならぬ「生府」によって、平和と健康を理想とし、酒もタバコも禁止するユートピア。そんな健全すぎる監視社会に堪えられず、集団自殺をは…

尾崎行雄『咢堂放談』(1939)

一言で言うと「世界戦争の仲間入りはよせ」。ドイツやイタリー(イタリア)との同盟を戒めた著です。 両国の心酔者に遠慮したのか、「ムツソリニ首相やヒツトラー総統の仕事には学ぶべきところも多いが、無理もある」といった調子ではありますが、ユダヤ人へ…

司法省調査課『報告書集 二』「反戦運動」(1930)

大正期の平和主義文学は、官憲の側からはどう見られていたのか。気になって検索してみました。 田山花袋「一兵卒」、与謝野晶子「君死にたまふことなかれ」、武者小路実篤『或る青年の夢』などの既成文壇による反戦文学への言及はごくわずかで、プロレタリア…

安部磯雄『次の時代』(1930) より 「国際平和」

日露戦争期からの平和主義者の一人、安部磯雄の国際平和論です。 「戦争が人類の進化を促進し、男性的精神を養成してきた」という戦争弁護論を批判し、その代替物としての運動競技を奨励し(このへんが安部磯雄ですね)、各国の軍隊を縮小して(英米がインド…

村井弦斎『小松嶋』(『小松島』)における日露戦争

結末近くの軍備廃絶論だけ先に紹介してしまいましたが、半ばの日露戦争編では結構温度差があります。 ※ 二月の初めといふに日露の平和が破れて、大佐(引用者注 ヒロイン小夜子の義父)は直ちに朝鮮方面へ出征する事となつた。 (略。大佐から少将に昇進した…

板垣退助『一代華族論』(社会政策社 1912)での平和主義

昨日、1919年刊と紹介してしまいました『一代華族論』ですが、1912(明治45)年版があったことを発見しました。『社会政策』誌に掲載されたものの単行本化だそうです。 全文を比較したわけではありませんが、わが国は「徳義人道に基づく所の平和主…

板垣退助『一代華族論』(1919)より 「人種平等世界平和の大理想」

近代デジタルライブラリーで平和主義関連を検索してみると、有名無名の平和主義者がぞろぞろ出てきます。特に第一次大戦後の時期は。今回は有名人の方を。 板垣退助というと、「板垣死すとも自由は死せず」の名文句と共に暗殺された、と思ってる方が意外と多…