核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

#その他文学

孔月「偶像の時代・精神の自由―芥川龍之介「将軍」における〈中間的〉まなざしの意味―」」

筑波大学比較・理論文学会『文学研究論集』二〇〇七・二五号。 「まなざし」を主題に「将軍」を読み解く論文。これを読まずに自論を展開していたらと思うと冷や汗ものでした。 私が書こうとした論は将軍自身のまなざしで、孔氏の論は将軍をとりまく人々のま…

小森陽一『戦争の時代と夏目漱石―明治維新150年に当たって』かもがわ出版 二〇一八

やっぱり、漱石が平和主義者だったとは思えないなあ。と賛同できない点もありましたが、これはと思った箇所も。 『虞美人草』の、父親の肖像画が上から見下ろしているという箇所で。 ※ 皆さんは、上から見下ろす肖像画を見たという方はあまりいないと思いま…

宮本顕治「敗北の文学」中の「将軍」評

宮本顕治「敗北の文学―芥川龍之介氏の文学について」(『改造』一九二九(昭和四)年八月号)より。 ※ 「将軍」は? この将軍は、惨めにも手痛く嘲笑され諷刺されてゐる。この「長者らしい」将軍の軍服を剥ぎ取りながら、作者は無智で残忍で打算的な将軍の裸…

東京大学 小森陽一 教授・最終講義「戦争の時代と夏目漱石」

サイト「図書出版 文学通信」様より転載。私は約二十年前に静岡大学での小森先生の集中講義を一度受けたきりで、東大とは無縁の人間ですが、小森先生の最終講義は気になります。他ならぬ戦争の時代と夏目漱石の関係を含め、同意できかねる点もありますが……。…

吉田精一『芥川龍之介 Ⅰ』の「将軍」評

吉田精一『吉田精一著作集 第一巻 芥川龍之介 Ⅰ』(桜楓社 一九七九(昭和五四)年)より ※ 龍之介はこゝで当時の偶像破壊、英雄否定の風潮にもれず、人間性の自然さを価値評価の基準としている。戦争に対する自由主義見地からの批評、偽善に対する嫌悪が、…

ジェンダー/セクシュアリティから斬る「将軍」

斬って斬れないことはない、と思うんですよ。材料はけっこうありまして。 将軍の視線が「ほとんど処女のように、彼をはにかませるのに足る」だとか、あんな爺さんに手を握られちゃ嬉しくもねえなと言いつつ嬉しそうな兵卒とか。 かと思うと、下女との相撲や…

方向転換と再連結

将軍とは何か論から視線論に方向転換したわけですが、間をつなぐ理論が見つかれば、いい感じに連結できそうな気がしています。 たとえばバルトあたり、などというと、この間デリダを批判したばかりの癖にと言われそうですが、バルトはバルト、デリダはデリダ…

宮本顕治・吉田精一の「将軍」評入手

今となってはいかにも古いものですが、先行研究史中の数行として入手しておきました。 「将軍」以外の箇所も一通り読んでおきます。

現在、原稿用紙16枚

まだまだ枚数に余裕があるので、詰め込めそうです。 まず写真理論や視線理論による補強。こういう時だけは、バルトやフーコーが読みたくなります。引用するかは別として。 そして、「将軍」の現代的意義。プロパガンダにならない程度に。作品に忠実に。 とは…

研究対象

デリダを批判したら、訪問者数ががくっと減ってしまいました。お一人でも見て頂ける方がいる限りではこのブログを続けるつもりではいますが、少々考えさせられるところはありました。 もしかしたら、このブログ主は著名人をけなすのが趣味のあまのじゃくなの…

芥川龍之介『侏儒の言葉』より「小説」

横光利一の『純粋小説論』に先立つ、芥川の偶然と小説論。 ※ 本当らしい小説とは単に事件の発展に偶然性の少ないばかりではない。恐らくは人生に於けるよりも偶然性の少ない小説である。 ※ ……逆に言うと、偶然の多い小説は嘘っぽいと。 ペテルブルグで別れた…

「小さな王国」論、不採用でした。

残念です。明日からはまた文学と反戦のブログに戻ります。

『日本文学』二〇一九年一月号 特集 文学における〈公〉と〈私)

特集予告を見た時から期待していたのですが、その期待にたがわぬ内容でした。こういうのを書いてみたかった、と思わせる論文もありました。 それに加えて私を興がらせたのは、特に書名に「公」とか「私」を掲げているわけでもない、ジュディス・バトラーの引…

モデルではあっても風刺ではなく

結局、芥川「将軍」は乃木希典への風刺なのか。おとといの問題提起を受けて、現時点での考えを述べてみます。 乃木をモデルにしており、乃木についての予備知識(白襷隊とか殉死とか)を必要とする小説ではあるが、乃木個人への風刺ではない、というのが結論…

篠崎美生子『弱い内面の陥穽 芥川龍之介から見た日本近代文学』翰林書房 二〇一七

同書の六章の注45に、「将軍」にふれた箇所があります。 ※ 「将軍」(『文藝春秋』一九二五・一(引用者注 『改造』一九二二・一の誤り))には一六箇所の伏せ字があり、これについては「澄江堂雑記〔「将軍」〕」に「官憲は僕の「将軍」と云ふ小説に、何…

斎藤美奈子『日本の同時代小説』岩波新書 二〇一八

中村光夫の『日本の近代小説』『日本の現代小説』にならって、1960年代~2010年代末までの日本文学作品を紹介する新書。21世紀の現代文学にうとい私のような者にとっては待望の書です。 同書に扱われているなかで私が読んだことのある最新の純文学…

来年の見通し

今年中には終わりそうもない、芥川「将軍」論の完成はもちろんですが。 もう少し大きな仕事にとりかかりたいものです。例えば、「大正の平和主義文学 総論」といった。 「戦争に対する〇〇」に何が入るのか。それを見極めた上で、昭和の『戦争に対する戦争』…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その6

非武装型の平和主義に対して、シュミットはなおも嘲笑を浴びせます。不快に思われる方はお許しください。 ※ 軍備を持たぬ国民は友のみを持つと信ずるのは愚かであろうし、多分無抵抗性によって敵の心が動かされうると信ずるのは自己欺瞞的な予測であるだろう…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その5

アウシュヴィッツの後でシュミットを引用することは野蛮であるか。いや、アウシュヴィッツをくり返させないためにこそ、シュミットを熟読する必要があると思います。たとえば以下のような箇所。 「政治的に実存する国民は、(略)友敵を区別することを放棄で…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その4

シュミットは戦争を是認してはいましたが、賛美してはいなかったようです。 ※ 生き残った者の商業と工業を繁栄せしめるため、あるいは、子孫の消費力を増大させるために人殺しをし、自らも死ぬ覚悟をせよと人に真面目に要求するといったことは、恐ろしくもあ…

シュミットにも三分の理

芥川の「将軍」は、将軍という戦争遂行機関を、外部の者たちの眼から見た作品なわけですが。 将軍の内部の論理を説いた理論はないものか、と探して見つかったのがカール・シュミット。 将軍というよりその背後にある国家の交戦権についてではありますが。 ※ …

文学不滅。

文学は死なず、滅びない。その思いを新たにした一日でした。 ただ、純文学不滅とは断言できません。

また「将軍」論に戻ってきたわけだが

現時点の構想のままでは、作品論としても平和論としてもどうにも弱い、と思うわけです。 で、支柱となる理論をあれこれ探しているわけですが、これが見つからなくて。 芥川版聖書「西方の人」「続西方の人」も読み返してみましたが、「汝の敵を愛せ」関係は…

大幅増量

安富歩『貨幣の複雑性』を引用して、沼倉紙幣が貨幣になる瞬間、および貝島が内藤洋酒店につかつか入った理由あたりを書き足しました。 これでもまだ貝島サイドの分析に片寄ってる感がありますが、メンガー経済学で「小さな王国」を読むという目論見は一応達…

マイルドに。

「将軍」論は年内に完成しそうもないので、「小さな王国」論をマイルドにしたやつを投稿しようと思います。 教育論や教室論には触れずに、経済学的に観た「小さな王国」に絞って。それも共産主義的小組織とか資本主義的欲望といった大きな話ではなく、人類が…

大きな絵は描けそうもないけれど

谷崎潤一郎の「小さな王国」論を書いた時は、「大きな絵が描けそうです」なんて大言を叩いたものの、マルクス経済学対近代経済学という、おそらくは私の手には負えない大問題になってしまい、当分封印するはめになってしまいました。 芥川龍之介の「将軍」論…

将軍という存在

将軍という装置。構造。システム。呼び方はまだ決定していませんが、わが「将軍」論は、文字通り将軍とは何かを問う論になりそうです(乃木将軍やN将軍が何者か、ではなく)。 将軍とは「兵士を率いて国民のために戦う存在」、といったあたりが一般的な認識…

友敵峻別への嫌悪

ようやく芥川の「将軍」にとりかかる気になったので、ここ数日のシュミット論とどうつながるか、まとめてみます。 「将軍」の四つの挿話に共通しているのは、友敵峻別への嫌悪ではないかと。決死隊員のぼやきも間諜処刑へのためらいも強盗劇への失笑も・・……

『戦争に対する戦争:アンチ・ミリタリズム小説集』(予定)

次に大きな図書館に行くときに、まとめ読みしようかと思います。あるいは古書で購入するかも知れません。 シュミットの批判をどれだけ超えられているかを見極めるために。 なお、CiNii図書で収録作品一覧が入手できました。 ※ 馬車屋と軍人 / 江口渙著 …

マルメロの原産地は?

「将軍」そのものについての考察が進まず、末尾に出てくるマルメロについて考えてみました。 芥川全集の注釈には南欧原産とあったのですが、ウィキペディアでは中央アジア原産となっていました。 図書館の図鑑で調べてみます。真の問題は芥川がどちらと考え…