核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

古代ギリシア

『プルタルコス英雄伝(上)』「ペリクレス」―パルテノン神殿着工編

ギリシアといえばパルテノン神殿(最近は経済危機のニュースばっかりですけど)。あの丘の上の、大理石の柱がいっぱい立ってるあれです。ちくま文庫『プルタルコス英雄伝(上)』(1987)の「ペリクレス」伝より、パルテノン神殿建設のいきさつを紹介し…

ミノタウロス雑感

地下迷宮の奥底に潜むモンスター、というRPGの定番を生み出したミノタウロス。牛頭人身というデザインがかっこいいせいか、あちこちで見かけます。 ※ 孤独な少年の内面をつづった私小説・・・の作者がミノタウロスだったという話を、幻想小説の大御所二人が…

テセウスの船の問題

ちくま文庫『プルタルコス英雄伝(上)』(1987)の「テセウス伝」31ページより。 三浦俊彦『論理パラドクス』(二見書房 2002)にもとりあげられていた問題です。 ※ テセウスが若者たちと一緒に乗って出帆し、無事にもどって来たその三十(木偏に…

村川堅太郎編 『プルタルコス英雄伝(上)』ちくま文庫 1987 「テセウス伝」

著者のプルタルコス(プルターク)は紀元50~120年頃、ローマ帝国時代のギリシア人です。あまりにも有名な古典ですが、連休のひまつぶしに、読めるところまで読んでみることにしました。最初の(ちくま文庫版での最初であり、プルタルコスが最初に書い…

デモクリトスの円錐問題 解決編―三浦俊彦『論理サバイバル』(二見書房 2003)より

同書26ページ、「デモクリトスのジレンマ」より。 ※ はっきり言えることは、(略)円錐としてどのような円錐を考えているのか―A.物理的な円錐か、B.数学的な円錐か―について曖昧だということである。(略) A. 物理的円錐を物理的に切断したとすれば、…

ブタの理想国―プラトン『国家』における戦争の起源

プラトン著、藤沢令夫訳『国家(上)』(岩波文庫 1979)より。半年ほど前に扱った時に、「トラさん乱入編」をやるとか予告してしまいましたが、現在の私にはトラさんを論破できるだけの能力はないことが判明しまして。 第1巻の正義論を少し飛ばしまし…

古代ギリシアの貨幣制度その2

昨年の12月14日にもとりあげました、古代ギリシアの貨幣制度。日本円換算の部分は私の勝手な憶測なので、あまりあてにしないでください。 1オボロス(約1000円)が最小単位。1日の最低賃金が2オボロス。民会・裁判出席の日当が3オボロス。 1ド…

アリストパネースの『プルートス』を読んでたら

「一万三千年もの間、男を追いまわしてきたような女」という一節がありました(『ギリシア喜劇全集4』岩波書店 2009 175ページ)。惜しい。

アリストパネスのソクラテス批判をめぐる覚え書き

いや、アリストパネスがソクラテスを批判したこと自体を責める気はないし、アリストパネスにはその資格があると思います。ただ、「信仰や伝統の破壊」ゆえに責めるのは、どう考えても見当はずれだと思うのです。 言っちゃあなんですけど、アリストパネスは初…

イソクラテス 「平和について」(紀元前355年)

筑摩書房『世界文学大系 63 ギリシア思想家集』(1965)69ページより。長坂公一訳。 ※ そこで要するに、わたしはこう主張します。 われわれは、キオス人、ロドス人、ビュザンチオン人に対してのみならず、全世界を相手に平和条約を取り結ばなければ…

デモクリトスの円錐問題~解決に向けて

Ciniiで論文検索しても答えが見つからないので、大検(大学入学資格検定)ぎりぎり合格レベルの数学力しかない私が勝手に考えてみました。数学の証明問題なんて何十年ぶりでしょうか。 「円錐を底面と平行な面で切断した時の、二つの切り口が等しいことを証…

デモクリトス断片その4  廣川洋一 『ソクラテス以前の哲学者』 講談社学術文庫 1997より

前回は重い話だったので、話題を変えます。今度は脳のトレーニングっぽい話。 デモクリトスの円すい問題とか言って、古くから有名な問題らしいです。 ※ 断片155 円錐が底面と平行に平面によって切られる場合、切断された両部分の表面をどのように考えなけ…

デモクリトス断片その3 廣川洋一 『ソクラテス以前の哲学者』 講談社学術文庫 1997より

デモクリ3回柿8年。今回は残念なお知らせです。 ※ 257 (要約。害をなす動物は積極的に殺すべきとの趣旨) 258 正義に反して害をなすものどもは、すべて何としても殺すべきである。このことを実行する者は(実行しない者よりも)、いかなる社会秩序…

デモクリトス断片その2 廣川洋一 『ソクラテス以前の哲学者』より

何回やってもエビルプリーストが倒せないので、イオニア哲学に話題を変えてみます。原子論の完成者デモクリトス(紀元前470年生まれ。全盛期は前420年頃)。ある意味タイムリーなお人。なお、原子論の創始者はレウキッポス(紀元前435年頃)だそう…

廣川洋一 『ソクラテス以前の哲学者』 講談社学術文庫 1997 ヘラクレイトス断片

もう一冊、『世界文学大系63 ギリシア思想家集』(田中美知太郎他訳 筑摩書房 昭和40)という本も借りましたが、収録されているヘラクレイトス断片の内容はほぼ同じでした(筑摩版は断片130~138を追加)。とりあえず廣川訳の断片をいくつか引用し…

ヘラクレイトスの反民主・反平和主義―柄谷行人「哲学の起源」第四回より

いや、私は基本的にカール・ポパーを尊敬しているんですけど、この件については一考の余地があります。 ※ ヘラクレイトスは、大衆を蔑視する貴族主義的な思想家だという定評がある。その中でも代表的なヘラクレイトス批判者は、カール・ポパーである。彼の考…

イオニア(とりあえずウィキペディアと世界史参考書より)

数百年と2000年前から平・和・主義~♪。というわけで、2011年頃から脚光を浴びつつあるイオニアについて、ごく基本的なところを紹介します。 現代の世界地図を見ると、アテネを首都とするギリシアの「西」にイオニア海だのイオニア諸島だのといった…

デモクリトス断片(柄谷行人「哲学の起源」より孫びき)

「イオニア自然哲学の最終的到達点と目される」デモクリトス。まとまった書物の形では残っておらず、断片が知られるのみだそうです。柄谷行人の引用をさらにダイジェストしてお送りします。 ※ (断片41)恐怖の念からではなく、義務の思いから、人は罪を犯…

アリストパネース 『アカルナイの人々』(紀元前426/425年上演)

2011年11月23日のブログで、アリストパネースの『平和』(紀元前421年上演) を「人類が持ち得た最古の平和主義文学」なんて書いちゃいましたけど(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/archive/2011/11/23)、もう4~5年ほどさかのぼれる…

アリストパネース 『騎士』 (紀元前424年)

『ギリシア喜劇全集1』(平田松吾訳 岩波書店 2008)。図書館に返す日が迫ったので手短にまとめます。こんなタイトルですが、英雄叙事詩と呼べるかどうかは微妙な内容です。作者が作者だし。 アテーナイ市民デーモス(まんま「市民」を意味する名前です…

アリストパネース 『雲』(上演は紀元前423年)

「皆さんを芝居通と見て、わが喜劇のなかでもこれがもっともすぐれたものと考えました結果、心血注いで練り上げた作品を皆さんに最初に味わっていただきたいと、願ったのであります」(パラバシス気茲蝓^棏僂蓮悒リシア喜劇全集1』橋本隆夫訳 岩波書店 2…

古代ギリシアの貨幣制度

おなじみ『ギリシア喜劇全集1』(岩波書店 2008)の資料18ページから要約します。 1オボロスが最小単位。1日の最低賃金が2オボロス。民会・裁判出席の日当が3オボロス。 1ドラクメー=6オボロス。1家が2、3日生活できた。 1ムナー=100…

アリストパネース 『鳥』(紀元前414年)

平和・民主・女権を訴える古代ギリシアの喜劇作家アリストパネースが、ついに動物の権利問題にふみこんだ問題作。腐敗したアテーナイに嫌気がさした二人の旅人が、鳥たちの国にたどり着きます。 人間だとばれて八つ裂きにされそうになった二人は、必死に鳥た…

アリストパネース 『蛙』(紀元前405年上演) 歌の場面Ⅲ~エクソドス

まだ蛙トーク続けるの!?今回で最後です。まず前回名前が出てきた、乱世の梟雄アルキビアデスのこの時期の動向について、手短に説明します。 当代屈指の英雄でありながら、部下の敗戦の責任を負わされて失脚し、彼は人生二度目の亡命の日々を送っていました…

アリストパネース 『蛙』(紀元前405年上演) エピソードⅢ

そろそろマンネリ気味ですが(アリストパネースがじゃなく私の紹介が)、ようやく重厚なるアイスキュロスと軽妙なるエウリーピデースの、スーパー古典派バトルが始まります。 古代アテナイの三大悲劇詩人は西洋でもあまり読まれていないらしく、19世紀ドイ…

アリストパネース 『蛙』(紀元前405) パラバシス~エピソードⅡ

演劇の形で演劇を語る、世界最古のメタフィクションを引き続き紹介します。内田次信氏訳『ギリシア喜劇全集 3』(岩波書店 2009)より。 真の詩人を求めて冥界に下りた、酒と演劇の神ディオニューソス。探していた悲劇詩人の一人エウリーピデースは見つ…

アリストパネース 『蛙』(紀元前405)プロロゴス~エピソードⅠ

今度は反戦劇ではなく、メタフィクションです。数年前に死んだ三大悲劇詩人の一人エウリーピデースを慕って、酒と演劇の神ディオニューソス自らが英雄ヘーラクレースの獅子皮をまとい(対ケルベロス用装備です)、死者の国に下るという筋です。 ※ ヘーラクレ…

アリストパネース 『リューシストラテー』(『女の平和』 紀元前411年上演)

アリストパネースの反戦喜劇シリーズ第二弾を紹介します。 むかしの訳では「アリストファネス」の『女の平和』となっていました。 原題である主人公の名前リューシストラテーは、リューシス(解体)とストラトス(軍隊)の合成語の語尾を女性形にしたもので…

アリストパネース 『平和』 (紀元前421年 上演)

人類が持ち得た最古の平和主義文学。アリストパネースの喜劇『平和』を紹介します。引用は『ギリシア喜劇全集2』(岩波書店 2008)より。 ※ トリュガイオス ゼウスよ、私たちの民族にいったい何をしようとしているのか。 あなたは知らぬ間に諸ポリスを…

ソクラテス、敢えて悪法に背く!

7月29日の記事(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/archive/2011/07/29)で書きました圧制者クリティアスの穏健派テラメネス粛清事件について、新たな史料を見つけたので報告します。 ディオドロス(前1世紀中頃、つまりローマ時代の歴史家)の『…